台風の 余波の大雨 呑み込みて 坂東太郎 海に入りゆく 街道沿ひの 店閉じられて 草深く あわだち草の 黄の色侘し 金の鈴 下げし子猫が あじさいの 下をくぐりて 隣家に帰る 見えぬ目に 涙一すじ 光らせて 富士を極めし 人の映像 大寒に 入れる空気の 冴えわたり 薄くれないの 空の色かな トンネルの 先に光は 見ゆるもの 通りすぎねば 光とならず 病む人に 言葉合わせる 術も知り 看取りつゞけて 八十路となりぬ 追いかけて 子に雨傘を 持たせしが 銚子の空を 雨素通りす 大丈夫 医師の笑顔に さゝえられ 癒えて今年も 着る花衣 子には子の 好みもありて 衣更え 逃げる幼と 追ひかける親 雨にぬれ 咲くあじさいと ゆ〜らゆら 風吹くまゝの コスモスが好き 若き日の思い出の一首(1939年) 訪めくれば 下総の真間 春たけて 手児奈の堂に 花の散りつゝ |
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